自家焙煎 でっち亭 [懐かしの名店]
「TOKUSHIMA COFFEE WORKS」の原点「でっち亭」
1980(昭和55)年、小原 博氏が徳島市大原町に自家焙煎の店「でっち亭」を開店。“自家焙煎”と看板には書いてあるものの、当時その認知度は低く、「ビールがない」「そうめんがない」「コーヒーが溶けない(インスタントコーヒーと間違えてる?)」などと言われるお客さんもいたとのこと。徳島で“自家焙煎”という言葉を、この店の誕生によって初めて知った方も多いのではないだろうか。また、徳島の喫茶業界において堂々たる存在感を放つ「珈琲美学(現TOKUSHIMA COFFEE WORKS)」の原点ともいえる店であることは周知のとおり。
「でっち亭」の店名の由来は、酒屋さん(親戚)が身に着けていた“品質本位”と書かれた前掛けから。前掛け=でっち。その言葉の意味と響きが気に入って名づけたという。焙煎においてはこの時まさに”入門したばかりの者”であった小原氏の思いを感じとれる店舗名である。
小原氏が先にオープンさせていた阿南の「ディラン」は料理が主体の店であり、コーヒーにはそれほど重きを置いていなかった。他店一般でもそういう風潮であった。しかしコーヒーだけが手作りでないことに違和感を感じ、自分でコーヒーもやりたいと思うようになる。知り合いからは「コーヒーは難しいからやめとけ。」と言われたが逆に火がつき、勉強を始める。そして奇遇にも、東京で過ごした学生時代住んでいたのが吉祥寺「もか」の隣。その時はその店がすごく有名な珈琲店であったことも知らなかったのだが、コーヒーの道を志し、改めてそういう気持ちで飲んだ時、コーヒーの美味しさ、奥深さにのめりこみロースターを目指すことになる。
独学で焙煎をはじめ、当時徳島ではコーヒーに特化した店「珈琲人チェーン」が流行っている中、「でっち亭」をオープンさせた。「ある時、珈琲メーカーの支店長に「でっち亭」のコーヒーを出したところ一笑された。そのことで益々火がつき、焙煎にいっそう努力することが出来た」と小原氏は笑う。それから10年後、徳島市山城という一等地に「珈琲美学」をオープンさせ、徳島の喫茶業界の一翼を担う存在となる。
※昭和61年時のマッチ。有限会社アカマツさん提供。